2016年3月22日火曜日

君に捧げるメロディ

 
 
 
 
 
 
そう言えば シロを見かけないなと思い
ハウスをそっと覗いてみると

大事そうに卵を3つ抱いていた
この週末に産んだらしい
 






 
 
この冬は
巣籠もりもほとんどしなくて
 
籠ったなと思っても卵を抱いていなかったり…




シロの様子がいつもの冬とは違うので
今年は新しい雛の誕生は無いのかなぁ・・・と

あきらめかけていただけに


早春の嬉しいサプライズに…
 
 

 
 
 
 
 
 
 
夜、

明かりを少しだけ落とした薄暗い部屋で
まったりとしていると


どこからか
くぐもった、ひそひそ話が聞こえてくる
 

 
こんな時間に誰だろうと思いながら
声がするほうへとたどってみると


シロが籠っているハウスから
どうも聞こえてくるようだ。


 






 
 
そっと覗いてみた

 
 
ハウスのなかでは
卵を温めている妻のシロのすぐ横で
夫のかい君が腹這いになって
からだをぐっとシロに寄せている

そして、ふたりで頭をくっつけあって
じっと見つめあって


シロが耳を傾けている

その耳元に何かをつぶやいている かい君・・・
新しい命をつないだ妻の労をねぎらっている夫のように







 
 
部屋のなかで響いていたひそひそ話、

それは、かい君が
シロの耳元で
話し聞かせていた声だった

 

●○●○●○●○●○



 
シロのハウスは、冬の間、暖房効果を
少しでも高められるように
ハウスを段ボールの空き箱に入れている

そのハウスのなか
かい君の話し声に
うまい具合にエコーがかかって増幅され
ひそひそ話のように漏れ聞こえていたようだ



 
そっと  ハウスから離れて
耳を澄ましてみる
 
 
ふたたび
ひそひそ話が聞こえてくる

 
 



 
 
「かいくんくん」  「よこはまし さかえく xxxx」  「おいで おいで」
「ピュルルルル、ルルル」  「xxxxx (聞き取れず)」 「おはよう おはよう」


 
この3年間かけて かい君が一生懸命に覚えた言葉たち
その言葉たちがアトランダムに繰り返されている
 
た くさん覚えてくれていたんだね、かい君



 
どうして 俺たちが教えた言葉を口にしているんだい
自分達の言葉だって、話だってあるんだろ
 人間の言葉なんてさ
上っ面だけで 中身なんかないんだぜ
お前たちの 純粋で一途な愛情には もったいないよ

でも とっても 照れくさくて うれしいよ
サンキュー かい君



 
 
その言葉たちに
かい君が命を吹き込んで・・

ひとつのメロディへと紡ぎだしていく










出産を終えたばかりの妻を
いたわる夫からの言葉の贈り物、

この子供たちをどんな風に育てていこうか? 
そうだ 名前は?

そんな夢にあふれたストーリなのかな

それとも まだまだ姿の見えない子供たちに
聞かせるおとぎ話なのかい








 
読書灯のやわらかな灯りに照らされた
薄暗い部屋が
かい君が紡ぎだす
やさしくて
暖かいメロディに包まれていく
 
 
 
かい君から
これから生まれてくる子供たちへ
そして
最愛の妻であるシロへ

父親として夫として
かい君が捧げる
愛情いっぱいのメロディに・・・






 

 



 




 

 



 

 

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